実の親だから何かしてあげたい・・・。そう考える人もいれば・・・ 実の親だからこそ、これ以上迷惑をかけないで欲しいと願う家族もいる・・・
もちろん、患者さんも子どもにだけには、迷惑をかけたくない・・・ そう願う人の一方で、子どもなんだから、これくらいはしてもらっても当然よ・・・
色々なドラマがあるのが病院です・・・
私が若かりしき出会った印象的で、深く考えさせられた事を書きたいと思います。
当時、自営業をされていて日々の暮らしがやっとだったAさん。 コロナはまだ流行っていない寒い日でした。ご自身の体がだるく、風邪かなと思っていたようです。
「歳のせいだ。寝たら大丈夫だろう。」 「今日もだるいけど栄養ドリンクを飲んだら仕事がこなせるだろう。」
自分を鼓舞しながら、多くを語らない。もくもくと仕事をこなす職人タイプ・・・
子どもが4人。二人は成人していたと思います。二人とも家の自営業を手伝っていました。 下の二人は高校生だったような・・・ かなり前の出来事で私もはっきり家族背景は覚えていません。
ある朝、Aさんの顔は真っ青になっていました。返事は出来ていましたが息をするのもやっとの状況でした。 家族が様子がおかしいと言うも、本人は「病院へは行きたくない。」と言ったようです。でも様子がおかしいAさんをほっとけず、無理やり病院に連れてきました。
採血を採り緊急入院となりました。Aさんはクリーンルームという部屋での入院となりました。 白血球数が異常な多さでした。白血病です。
Aさんと家族へ医師から白血病の説明を行いました。 するとAさんは「治療はしたくありません。」と言いました。
家族も医療者の私たちもびっくりしました。
時間はかかっても寛解の見込みはあります。大昔に比べて薬の種類も増えました。
しかし、本人の意思は固かった。
その日は、本人・家族・先生までも涙を流しながら遅くまで話し合いが行われたことを今でもはっきりと覚えています。
Aさんは自営業の借金がもう少し残っていたようです。しかし、Aさんの妻・そして二人の子どもが力を合わせれば何とかなると思える金額だったようです。
そこに、何年かかるかわからない自分の病気の治療が加わると、自分の治療費を稼ぐために家族が苦労しなければならない。これ以上家族に迷惑をかけたくない・・・Aさんは泣きながら訴えていました。
家族は、お金より命を大事にして欲しいと切に願いましたが、Aさんの気持ちが動くことはありませんでした。
Aさんは痛みを取るような治療のみを選択し、人生の終末を家族で過ごせるよう私たちもケアしていきました。
Aさんは、日に日に疲労感も増し、発熱もし、そのたびに痛み止めやステロイド等を投与し、様子を見ていきましたが、緊急入院から1か月も経たないうちに・・・・・天国へ・・・
家族もずっと泣いていました。
実の親だからこそ、子どもの荷物にだけはなりたくない・・・そう語っていた患者さん。
看護師になって間もない私にとって、忘れられない患者さんです。
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